講師

バイオスパイア株式会社 代表取締役
Oxentia シニアコンサルタント
松永昌之氏

2023年2月のメドテックサロンでは、講師としてバイオスパイア株式会社 代表取締役、Oxentia シニアコンサルタントの松永昌之さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは「アカデミア出身者向けグローバルピッチ ~将来のパートナーのハートをつかもう~」です。
「投資先としての日本の強み・弱み」「ピッチとプレゼンテーションの違い」「良いピッチのために気を付けること」「イギリスによる日本のスタートアップ企業支援」という流れでお話いただきました。

まずは「投資先としての日本の強み・弱み」です。
現在、日本はたくさんの投資家から注目を集めています。
これは、研究開発のレベルが高く、知的財産として保障されていることや、“人”への信頼があり、一度関係が始まると長い付き合いができることなどが理由です。
一方で、グローバルマーケットへの露出が少ないことや、会話での返しがあまり上手くないこと、ピッチに改善が求められることなどが弱点として挙げられます。

次に「ピッチとプレゼンテーションの違い」について説明いただきました。
松永さんいわく、「プレゼンテーション」は先生が生徒にレクチャーを行うといった一方向なものであり、「ピッチ」は発表者と聴講者がお互いに与えあうものだと解釈されています。
さらに、良いピッチは、聴講者がその内容を別の人に伝えることで独り歩きをするものだとも考えていらっしゃいます。

後半は「良いピッチのために気を付けること」として、良いピッチで触れるべき6つのカテゴリーとその流れをご紹介いただきました。
まず、自分の研究テーマに関連する社会的な問題点(1.Problem)と、その問題の市場規模(2.Market)について話します。
その際に、投資家はニッチなマーケットへの投資はリスクと考えるので、10億ドル以上の市場があるというエビデンスを出すとより良いでしょう。
続いて、最初に述べた問題は自分の研究をもって解決できること(3.Killer Technology)を説明します。
一般の人でも理解できるように、極めて簡潔に説明することがポイントです。
さらに、この研究が終わっても次の研究テーマがあり、ビジネスはどんどん加速していくという今後のビジョン(4.Growth vision)を伝えます。
市場における競合を明確にし、相手を蹴落とすのではなく、自分の研究を相対的に位置づけることも大切です(5.Competitive landscaping)。
そして、松永さんが一番重要だと感じているのが研究チームの紹介です(6.Team)。
投資家の目線に立つと、研究者だけのチームよりも、ビジネスに強いアドバイザーが加わっているチームの方が信用できると言います。
投資家は「お金を出すことで、自分たちの困り事がどれだけ早く解決できるのか」という点に一番興味を持っています。
5分という短いピッチの中で必要な情報を伝えるため、「研究者の経歴」「研究拠点」「チームや会社の沿革」「未来に向けた抽象的なメッセージ」などに触れる必要はありません。

また、「イギリスによる日本のスタートアップ企業支援」として、イギリス政府が日本のスタートアップ企業支援に力を入れている背景や、実際の支援プログラムの内容についてもご紹介いただきました。

最後に設けられた質問コーナーでは、「良いピッチの流れとして、早い段階でMarketについて述べておくのはなぜか」、「投資家ではなく、日本の老舗企業の心を掴むピッチにするにはどのような点に気を付ければ良いか」、「日本人の持ち味を生かしたピッチにはどういったものがあるか」など、たくさんの質問が寄せられ、丁寧にお答えいただきました。

松永さん、ご講演ありがとうございました。