講師

アイリス株式会社 薬事推進部プロジェクトマネージャー

中村 実穂

2022年1月のメドテックサロンでは、講師としてアイリス株式会社 薬事推進部プロジェクトマネージャー 中村 実穂さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義は「臨床研究と治験」というテーマについて、「医療機器の概要」「臨床研究」「倫理指針と臨床研究法」という流れでお話をいただきました。

冒頭では、医療機器の分類についてお話いただきました。日本と海外では分類方法が異なっていますが、どちらも人体へのリスクごとに分類。実際に、開発する医療機器がどの分類にあたるのかを把握することで、薬事申請がスムーズになります。

次に、医療機器の申請区分について教えていただきました。新医療機器(これまでに全くなかった新しい医療機器)、後発医療機器(他製品と同一性をもつ)、改良医療機器(どちらとも判断できないもの)の3つに分かれており、こちらも当てはまる分類を確認することで、その後の見立てに役立ちます。

続いて、臨床研究の定義と種類についてお話しされました。一般的に、臨床研究は安全性と有効性を評価することを目的としたものを指すのに対し、臨床試験(治験)は薬事承認を目的としているそうです。ただし、これらの分類は所属先によって使い方や意味合いが変わってくるので、職場内で認識を合わせておく必要があります。

また、規制も分類によって異なっており、医療機器の承認申請を目的としている場合はGCP省令、GPSP省令といった規則に則って実施。承認申請以外の目的の研究は、臨床研究法の対象になっていれば臨床研究法、それ以外は2021年6月に施行された「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に準ずる必要があります。

このうち、臨床研究法は臨床研究に関する不適切事案が施行の背景になっており、「研究の質の確保」「被験者保護」「透明性の確保」の考えが基にあるそうです。法施行の効果としては、医療機関によるデータ改ざんや、保存すべき記録の破棄といった事案の改善が挙げられます。また、メーカーの資金提供情報の公示が義務付けられたり、認定臨床研究審査委員会(CRB)が設置されたりしたほか、厚生労働省の権限強化にもつながりました。

後半では、倫理指針と臨床研究法についてお話されました。倫理指針の対象範囲は、「人を対象とする臨床研究」または「ヒトゲノムの研究」です。このうち、人を対象とする研究は傷病の成因や病態理解、傷病の予防・改善、治療方法の改善・検証を目的とした医学系研究が該当します。倫理指針は読みづらい文章ですが、倫理指針のガイダンスを読むと分かりやすいとのことでした。

一方、臨床研究法は2018年4月に施行され、特定臨床研究者に対して監査や利益相反の管理、インフォームドコンセントの取得、個人情報の保護、記録の保存を義務付けています。さらに、研究実施の適否については、CRBの意見を聞いたうえでの厚生労働大臣への提出が必須。また、特定臨床研究以外の臨床研究をする場合も、実施基準の遵守やCRBへの意見聴取に努めることが義務付けられています。

続いて、臨床研究実施体制の一例を紹介され、CROとSMOという協力者について教えていただきました。CROは研究実施主体者の支援を行っており、医療機関に対する研究説明や、モニタリングをしてくれます。一方、SMOは医療機関に対する支援をしており、書類作業や報告、データ登録、治験者への説明などを現場に入って行っていることがわかりました。

最後に設けた質問コーナーでは「組織規模が大きくなった場合に、予期せぬ不正が起きないようにするために必要なこと」「事前相談と研究の流れ」についての質問があり、丁寧に分かりやすくご回答いただきました。

中村先生、ご講演ありがとうございました。