講師

特許庁 総務部 企画調査課 スタートアップ支援係長 大塚 美咲

2022年11月のメドテックサロンでは、講師として特許庁総務部企画調査課スタートアップ支援係長の大塚 美咲さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは「医療機器開発における知財と特許庁のスタートアップ・大学支援」です。
「知的財産(権)とは?」「大学における特許」「医療機器開発の知財戦略」「特許庁におけるスタートアップ・大学支援」という流れでお話いただきました。

まずは「知的財産(権)とは?」についてです。
知的財産とは財産的価値を持つ情報のことで、特許権・意匠権・商標権などが挙げられます。その中でも、医療機器開発においては特許権が重要です。特許権を取得することで、技術を独占し他社からの模倣を防止できる(独占)、連携先・協業先を見つける際の交渉ツールとして使える(連携)、技術力の裏付けとなり資金調達を受けやすくなる(信用)、といったメリットが得られます。

次に「大学における特許」についてお話いただきました。
大学での研究成果を社会に提供するためには、民間企業と共同研究を進めたり、民間企業へライセンスアウトを行ったりして、研究成果を事業化する必要があります。
大学の先生の中には、「研究成果や技術を自由に使ってほしいので特許は取得しない」という考えを持つ方もいらっしゃいます。しかし、特許を取得しなければそのメリットである連携や信用が損なわれ、事業化に向けた連携先企業を見つけにくくなるという傾向があります。
企業と連携して実用化を進めるためには、大学においても特許を取得しておくことが重要です。
実際に、特許出願に取り組み始めると「連携先企業がすぐに見つかった」「実用化に向けた臨床試験が進んだ」といった事例もご紹介いただきました。


後半は「医療機器開発の知財戦略」についてお話いただきました。
開発した医療機器を使って患者様により良い医療を届けるためには、経営事業戦略・薬事戦略・研究開発戦略に加えて、知財の取得に関わる知的財産戦略が必要不可欠です。知財の取得が適切に行われていないと、他社に先を越されて研究開発に支障が生じたり、技術を模倣されて価格競争になってしまったりと、戦略全体に影響を及ぼす可能性があります。
戦略を考える際には、特許のメリットである独占・連携・信用のどこに重きを置くかを考えることも重要です。ある新たな技術が生まれた時、その技術を活用できる既存の市場がある場合とない場合では、知財戦略は大きく異なります。前者の場合には他社との競争もあるため、自分たちの技術で市場を独占する方法を考えなくてはなりません。後者の場合には技術に対する理解・信用を得ること、他社と連携して市場を作っていくことに重きを置いて、戦略を考える必要があります。

また「特許庁におけるスタートアップ・大学支援」として、企業に専門家を派遣してビジネス戦略に連動した知財戦略の構築を支援する活動や、知財に関する情報を取得できるコミュニティの運営などをご紹介いただきました。

講演の最後には「大学発のベンチャー企業に特許庁がフォローアップを行った事例はあるのか」といった質問や、実際に特許庁の支援を活用して企業の立ち上げを行った際の感想などが寄せられました。

大塚さん、本当にありがとうございました。