講師

ふくしま医療機器開発支援センター 事業企画推進部長
石橋毅

2023年5月のメドテックサロンでは、講師としてふくしま医療機器開発支援センター 事業企画推進部長の石橋毅さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは「医療機器の開発から事業化まで一体的に支援する“ふくしま医療機器開発支援センター”について」です。

「福島県における医療機器産業」「ふくしま医療機器開発支援センターの沿革と4つの機能」「各種安全性試験の詳細」という流れでお話いただきました。

まずは「福島県における医療機器産業」についてです。
福島県は2005年より、医療機器産業のクラスター推進構想を掲げ、国と県のプロジェクトを活用して医療機器産業の発展に向けた取り組みを行っています。
この取り組みにより、福島県における医療機器製造業者数は78施設まで増加しました。これは2005年と比べて約2倍の数です。さらに、医療用機械器具の部品等生産金額も11年連続で全国1位となっています。

次に「ふくしま医療機器開発支援センターの沿革と4つの機能」についてお話いただきました。ふくしま医療機器開発支援センターは、東日本大震災からの復興と産業振興を目的として2016年に開所しました。以下の4つの機能を備え、医療機器の開発から事業化までを一体的に支援しています。

●各種安全性試験
医療機器の評価や承認申請には、安全性試験の実施が必須です。「電気的、物理的安全性試験、環境試験、化学分析試験(非生物試験)」と「大型動物(ブタ)を使用した生物学的安全性試験(生物試験)」を行っています。

●コンサルテーション
医療機器産業には様々な規制や基準があります。医療機器に携わる方々に正しく理解・実践していただくため、薬事相談を受け付けたり、医療機器開発・改良への助言を行ったりしています。

●ビジネスマッチング
医療機器の事業化には、部材供給や試作開発、OEMなど、多くの企業との連携が欠かせません。「メディカルクリエーションふくしま」という展示会を開催し、マッチングの機会を提供しています。

●人材育成・トレーニング
次世代を担う若手医療従事者や学生のために、ふくしま医療機器開発支援センター内の見学や、センター内の設備を利用した実技トレーニングを行っています。

これらの4つの機能を用いた支援の事例として、生物試験(探索試験)と試作開発企業のマッチングをセットで行った事例や、生物試験後1か月以上に及ぶ経過観察を行った事例などを紹介いただきました。

最後に、ふくしま医療機器開発支援センターで行っている「各種安全性試験の詳細」として、安全性試験の内容を詳しく説明いただきました。
ふくしま医療機器開発支援センターは、非生物試験と生物試験、どちらも行うことのできる全国初の施設です。
非生物試験としては、落下試験、圧縮試験、恒温・恒湿試験、EMC試験などがあります。特に、EMC試験をクリアできずに開発計画に遅れが出るケースが多く見受けられるので、早めに対処しておくことが大切です。
生物試験では、おもにブタを使用しています。ふくしま医療機器開発支援センター内には手術室やMRI、解剖室があり、術後の経過観察を行うモニタリングや剖検、病理試験にも対応可能です(最長は1年間の経過観察実績あり)。
2017年以降、心臓血管や腫瘍、消化器などの分野において、200件を超える生物試験を受託しています。

最後に設けられた質問コーナーでは「補助循環デバイスを用いた試験を行った事例はあるか」「ブタ以外の動物で試験を行うことは可能か」「どの試験を行うべきか分からない場合は、センターでも相談に乗っていただけるか」など、たくさんの質問がよせられ、丁寧にお答えいただきました。

石橋さん、ご講演ありがとうございました。