講師
東京大学 開発サポート
澁澤 喜人
2022年4月のメドテックサロンでは、講師として東京大学 開発サポートの澁澤喜人さんにオンラインにて講演いただきました。
講義テーマは「販売側から見た医療機器開発の在り方」で、「医療機器営業の評価制度」「手術における病院の利益」「医療機器の流通」「医療機器営業の仕事」といった流れでお話していただきました。
冒頭は、ご自身の営業経験から、各個人が課せられているノルマの大きさと評価制度についてのお話でした。営業担当の評価には、定量的・定性的なものがあります。定量的な評価というのは、昨年対比10%以上、重点商品に関しては20%以上、チーム全体の売り上げ目標達成などです。営業成績によっては、ボーナスの金額が増減する場合があります。
続いて、外科手術の社会保険診療報酬や病院の利益について、澁澤さんが実際に担当した例を用いてお話していただきました。呼吸器外科の胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術では、92,000点が診療報酬として病院に入ります。1点あたり約10円なので、この手術をすることで約92万円の報酬となるわけです。さらに、手術で使用可能な医療機器を用いることでも加算されます。この診療報酬と医療機器加算の合計額が、病院の報酬となるのです。点数などの制度は2年に1度のペースで改定され、報酬から機材費、消耗品費、人件費を引いた金額が病院の最終的な利益になります。
次に、医療機器の流通についてお話していただきました。製造された医療機器は、医療機器メーカーに納品されます。その後は、医療機器販売業の地場代理店に行き、各病院へと納入されるのです。医療機器販売業を通さずに、病院へ直接納品することはできません。
しかし、こうした地場代理店には全国への販路があるわけではないので、優秀な医療機器を開発・輸入したとしても、なかなか拡販しにくい現実があります。医療機器を拡げるためには、医療機器メーカーの持つ販路が重要となるのです。大変分かりやすくお話いただき、興味深く拝見しました。
後半は、医療機器営業の仕事についてのお話でした。澁澤さんが所属されていた外資系医療機器メーカーでは、粗利65%以上でないと上市しない決まりでした。それだけ医療機器の販売は、大きなコストがかかるということです。一方、国内の医療機器メーカーでは粗利率25%程度で販売しているところもあります。これは、メーカーが増えたことで市場がレッドオーシャン化し、価格競争が起きているためと考えられます。
医療機器の営業は、プロモーション、流通、納品、定着、アフターフォローといった過程に関与します。プロモーションでは販路策定、ヒアリング、営業トレーニングなどを行いますが、最も大切なのはニーズを顕在化・表出化し、問題解決の提案をすることです。ソリューションツールが多い商品は医師のニーズを満たしやすいため、売れやすい傾向にあります。しかし、ハイスペックな機器でなくとも、ニーズさえキャッチできれば売れるという側面もあるのです。そのため、問題を顕在化させ、訴求することが重要になります。
また、医師には医療機器を勝手に購入する権限はありません。そのため、コスト面や差別化などの説明を事務や経営といった決裁者にしていく必要もあるのです。ほかにも、営業の仕事について細かくお話いただき、大変勉強になりました。
最後に設けられた質問コーナーでは、顕在化したニーズを活用した開発へのフィードバックやニーズのデータ化、アフターフォローのフィードバック、営業の仕事範囲、新医療機器のアプローチなどたくさんの質問がよせられ、丁寧にお答えいただきました。
澁澤さん、本当にありがとうございました。