講師

大阪大学医学部附属病院
未来医療開発部未来医療センター
特任講師

福田 恵子

講義の内容

2021年8月のメドテックサロンでは、講師として大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部未来医療センター特任講師の福田恵子先生をお招きして、オンラインにて講演を開催致しました。

講義は、「医療機器開発において関連する保険収載について」というテーマについて、「医療機器開発」「国民皆保険と診療報酬」「診療報酬の評価(保険適用)」「新規製品の場合」「新機能・新技術の場合の保険相談」という流れでお話しいただきました。

冒頭では、福田先生の自己紹介をしていただきました。福田先生は臨床工学技士として国内外で勤務をされたのちに、厚生労働省の医政局経済課・医療機器政策室に着任され、医療機器の保険収載について年間約300例もの話を聞く業務に従事していらっしゃいました。

続いて、医療機器開発について市場やトレンドなどの情報を交えて解説してくださいました。厚生労働省の中には、医薬品や医療機器産業の振興を担当する医政局経済課のほかにも、社会保険や診療報酬を管理する保険局医療課など、医療機器開発から保険収載に関する部署が数多く存在するそうです。また近年は医療機器の多様化が進んでいるため、薬事法や保険制度などをリフォームしていること、医療機器の研究開発から保険適用までのガイドブックが作成されたことなど医療機器開発に関する国の動きをご紹介いただきました。

医療機器開発の際には、診療報酬内外のどちらにするのかなど、出口戦略が重要だそうです。そのうえで診療報酬の仕組みや医療機器の評価、保険適用上の区分など知っておくべき情報を図解を用いて教えていただき、とても分かりやくイメージすることができました。

新規医療機器の保険収載は技術料包括と特材に分かれ、技術料包括に関しては、手技や定義、留意事項等、また特材の場合は、類別、一般的名称、定義などが一致していれば、相談なしに保険適用希望書を提出し保険収載へ、一方で不一致や有用性のエビデンスがあるようなものであれば相談や確認が必要になるという流れを詳説していただきました。

新機能:新技術においては、医療機器の中医協承認は毎年平均で約25個程度とハードルが高くなっているという現状をお話ししてくださいました。そのうえで、新機能・新技術で戦略を立てるのか、既存と同等(非劣勢)で戦略を立てるのかが非常に重要だということです。さらに、保険では薬事以上のことは評価できず、薬事における評価が保険を決定するポイントになると教えていただき、大変興味深く拝聴しました。

後半では、申請から保険適用までのフローをご紹介いただき、経済課への相談方法を解説してくださいました。申請区分の妥当性などを事前に相談することが好ましく、オンラインでも開催しているそうで、可能であれば治験よりも前に、できるだけ早く初回相談をしてほしいとおっしゃっていました。その後も、開発から市販までには数多くの相談機会があることに加え、相談時に必要となる資料や説明についても具体的に解説してくださり、大変貴重な学びとなりました。

さらに実際に経済課へ相談する際のポイントも教えていただきました。初めての相談では、最初の15~20分程で製品について説明し、残りの時間でディスカッションを深めるという流れが一般的だそうです。また、開発初期の段階から「可能性」について相談しておくこと、「事実や可能性」と「思い」は区別して説明し、危惧点も含めてすべて伝えることなど、重要なポイントを教えていただき、とても勉強になりました。そして、経済課はあくまでも企業の希望を聞き、可能性を伝え、サポートしていく立場であるということもおっしゃっていました。

最後に設けていただいた質問コーナーでは、「危険性の高い機器についての保険適用内外について」「新しさと保険償還価格」「補正加算について」「そもそもの医薬品と医療機器の区分」などの多くの質問があり、分かりやすく回答してくださり、丁寧なアドバイスもしていただきました。

福田先生、ご講演ありがとうございました。