講師

なゆた国際法律事務所 代表弁護士 﨑地康文 氏 

2022年7月のメドテックサロンでは、講師としてなゆた国際法律事務所 代表弁護士の﨑地康文先生をお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは「企業へのライセンスアウトに向けて知っておくこと」です。
「契約とは何か?」「ライセンス契約」「ライセンス契約での主要条項」といった流れでお話いただきました。

冒頭は「契約とは何か?」と「ライセンス契約」についての説明でした。契約とは法的拘束力を有する約束で、違反した場合には裁判所から差止命令を受けたり、損害賠償を請求されたりすることがあります。ライセンス契約にはさまざまな種類がありますが、どの契約にも共通するのは、ライセンサー(ライセンスをする人)がライセンシー(ライセンスを受ける人)に使用許可を与え、許可をもらった方がお金を払うという基本構造です。

続いて「ライセンス契約での主要条項」についてお話いただきました。ライセンス契約の契約書をしっかり書くと、日本語の場合10~15ページ、英語の場合30~50ページ程度と、とても長くなります。その中から経営者やライセンスアウトする方に知っておいてほしい主要条項として、ライセンスの対象・ライセンスの内容・対価の3つを挙げていただきました。

ライセンスの対象となるのは、特許、営業秘密・(ビッグ)データ、ソフトウェア、著作権、商標などです。ここでは、大学で特に取り扱いの多い特許のライセンスアウトについて詳しくお話いただきました。良い条件でライセンスアウトするためには、強い特許を取得しておくことが大切になります。強い特許とは、みんなが欲しいもの・お金を払うものを作れる特許であること、回避すると同じような作用効果が出ない特許であることです。こういった特許は価値が高いため、ライセンス料も高くなります。

ライセンスの内容は、独占もしくは非独占のどちらにするのかが最も重要です。独占ライセンスの場合は、ライセンシー以外の第三者へライセンスすることは禁止されており、ライセンサー側が利用できるかどうかも契約次第となります。

ライセンスの対価の種類には、イニシャルフィー、ランニングロイヤリティ、マイルストン支払い、ミニマムロイヤリティといったものがあります。具体的な金額や計算式は決まっていないため、実際の交渉の際に基準にしているものを紹介いただきました。

交渉の際には、交渉力や交渉術も大事になってきます。なかでも、BATNA(Best Alternative to Negotiated Agreement)を持つことが重要です。A社との交渉中、もしダメになったとしてもB社と良い条件でライセンス契約できるという話があれば、A社に対して強気に出ることができます。反対にB社がいなければ、A社に対して「安くても良いのでライセンス契約をさせてください」と立場が弱くなってしまいます。

また、講演中に設けられた質問コーナーでは、ライセンス契約交渉に関する具体的な方法等の交渉術や、弁理士の専門分野を調べる方法などたくさんの質問が寄せられ、丁寧にお答えいただきました。

﨑地先生、本当にありがとうございました。