講師

シャリテ医科大学
柏原誠

2023年10月のメドテックサロンでは、講師としてシャリテ医科大学の柏原誠さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは「日独の医学の繋がりのスタートと現在のベルリンのスタートアップを俯瞰してみました」です。
「シャリテの歴史と日本との繋がり」「シャリテの組織」「ドイツ・ベルリンにおけるスタートアップ」についてお話いただきました。


まずは「シャリテの歴史と日本との繋がり」についてです。
シャリテは1710年、ペストの流行に備えた隔離病院としてベルリンに設立されました。しかし、ベルリンはペストの流行を免れたため、シャリテは貧しい方や戦争で傷ついた方をケアする病院としての機能を果たしていきます。
日本との繋がりができたのは明治時代に入った頃です。ヨーロッパの学問を取り入れて近代化していこうという明治政府の方針に伴い、1871年にシャリテの医師2名が来日し、大学東校(現在の東京大学)で医学教育をスタートしました。その後も、アジア人として初めて博士号を取得した佐藤進や、研究を行った北里柴三郎、軍医として公衆衛生を学んだ森鴎外など、シャリテと日本の関わりは続いていきます。

次に「シャリテの組織」についてお話いただきました。
現在のシャリテは、病院・大学・BIH(Berlin Institute of Health)の3本柱で機能しています。BIHは、基礎研究から応用研究への橋渡しを目的として2012年に設立されました。当初はシャリテ内でこの橋渡しを行う小さな部門でしたが、デジタル化やスタートアップが急速に発展し始めたことから、現在では、シャリテ内外を問わずスタートアップをサポートする大きな組織となっています。
BIHは英語のホームページも運営しており、スタートアップに関するオンラインイベントやシャリテ内のワーキンググループの紹介、『Match and Connect』という外部からの問い合わせに対応する部署の案内等があります。ドイツ医療のトレンドについての情報収集や、シャリテの研究者と繋がるきっかけ作りに活用できるホームページです。

最後は「ドイツ・ベルリンにおけるスタートアップ」についてお話いただきました。
ベルリンは若い人たちがエネルギッシュに活動する文化が根付いており、アーティストやフリーランスが多く集まる地域です。ベルリンから生まれるアイデアで面白い事が起きるのではないかと期待する投資家も多く、ドイツにおける投資のうち、約60%がベルリンで行われているとのデータもあります。
また、ベルリン州の公的機関として、スタートアップの誘致や支援を行う部門が設立されたり、アワードや賞金のあるコンペが開催されたりと、州全体でも力を入れていることが分かります。

今後、ベルリンを含むドイツ・ヨーロッパとの共同研究や、スタートアップの立ち上げを検討する場合は、一緒に進めていく上での魅力をしっかりと伝えることが重要だと、柏原さんは考えています。
ヨーロッパ周辺にはアフリカやアラブ諸国など多くの国があり、日本に比べて容易に移動できるというメリットがあります。経済状態を見ても、アフリカやアラブ諸国はヨーロッパに出ることで得られるものがあったり、反対に、アフリカやアラブ諸国に行くことで今後の発展の手助けができるというモチベーションに繋がったりと、お互いにメリットがあると言えるでしょう。距離的に遠く、経済状態や裕福度に大きな違いの無い日本が、ドイツ・ヨーロッパと一緒に研究やスタートアップを行うのはなぜか、その魅力を伝えることができるように準備しておくことが大切です。

最後に設けられた質問コーナーでは「産科や婦人科、フェムテックの市場はどうなっているか」「子供に対するデジタル治療機器はあるか」といったヨーロッパ市場に関する質問がよせられ、丁寧にお答えいただきました。

柏原さん、ご講演ありがとうございました。