講師

大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部未来医療センター 特任准教授
福田恵子

2023年8月のメドテックサロンでは、講師として大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部未来医療センター 特任准教授の福田恵子先生をお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは「保険償還について」です。
保険償還の基礎となる「診療報酬の概要」「保険適用までの道のり」、そして「産情課での事前相談」という流れでお話いただきました。

まずは「診療報酬の概要」についてです。
診療報酬とは、保険医療機関及び保険薬局が、保険医療サービスに対する対価として保険者から受け取る報酬で、「技術・サービスへの対価」と「物への対価」の2つに分類することができます。「技術・サービスへの対価」は、初・再診料や入院料、検査料、処置料といった診療行為への対価を指します。「物への対価」は、医薬品と特定保険医療技術(特材)への対価です。医薬品は一品ずつ金額が決められていますが、特材は製品の構造や使用目的、効能・効果等に着目して、機能区分ごとに金額が決められているという特徴があります。例えば特材のひとつである人工靱帯は、テープ状やリング状、チューブ状などさまざまな形状のものがありますが、使用目的や効能・効果が同じであれば、金額も同じです。特材の製品数は約20万個あり、それぞれが改良・改善を繰り返すので製品の入れ替わりが多いことが、機能区分ごとに金額が決められている理由とされています。


次に「保険適用までの道のり」についてお話いただきました。
開発した製品は、PMDAや認証機関で薬事承認・認証を得た後、製造販売業者から医政局産情課に保険適用希望書を提出します。既存の定義や留意事項に当てはまるものであればすぐに保険適用が認められますが、定義や留意事項に当てはまらない新規性のある製品については、保険局医療課、保険医療材料等専門組織、中央社会保険協議会での協議を経て保険適用が認められ、診療報酬が決定します。
医療現場で使用される医療機器は、基本的にこの保険適用希望書を提出しなければなりません(一部必要でないものもあり)。提出しなければ、保険で認められていない診断/治療法(保険外診療)となるため、保険診療と併用する場合は混合診療となり診療全体が自由診療とみなされ、患者の負担が大きくなってしまいます。
ただし、先進医療等、保険診療と併用しても負担が大きくならないような仕組みが整えられている診断/治療法も存在します。

最後は「産情課での事前相談」についてです。
産情課は医薬品・医療機器産業の振興を行う部署であり、保険適用希望書の提出先としてだけではなく、保険適用に関する相談窓口としても機能しています。何度でも相談可能なので、製品の設計開発の段階で「保険適用の見込みはあるか?」と相談をしたり、臨床試験の段階で「このようなデータを取りたいが加算を求める方向性としてどうか?」と意見を聞いたりすることもできます。ただし、話を進める上では、臨床的意義や位置づけを説明できることが重要なため、薬事承認がある程度整理された状態で相談することをおすすめしています。その他にも、福田先生ご自身が産情課で働いていた経験をもとに、相談のポイントや注意点、どのような資料を準備すればよいかなど、具体的にお話いただきました。

講演の最後には、保険の基本から応用まで、丁寧かつ網羅的に説明いただけたとの感想や、「保険外診療の先進医療として申請する際には、保険適用と同じく製造販売業者からの申請が必要なのか」といった質問が寄せられました。

福田先生、ご講演ありがとうございました。