講師

国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 医療機器開発支援室長 冨岡穣氏

2022年9月のメドテックサロンでは、講師として国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 医療機器開発支援室長 冨岡穣さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。
講義テーマは「How to 薬事相談~資料の作り方~」です。特にPMDAとの相談にフォーカスした内容となっており、その上でテーマを大きく3つにわけ「相談の種類と性質」「相談事項の決め方」「相談資料の構成」についてお話しいただきました。また、PMDA相談に行ったことがない方の場合は想像しにくい部分があるため、具体的な流れについても細かく説明していただいています。

まず、最初のテーマ「相談の種類と性質」で理解しておくべきことは、「何を聞き、どの相談を申し込むか」ということです。「何に困っているのか」「何が聞きたいのか」もしくは「どの相談区分で申し込めばよいのか」についてはPMDAとの議論の中で答えが見つかることが多いです。ただし、開発品目に対する相談者の考えがあまりに定まっていない場合や、使用する場面やどこを目指して開発しているのか(臨床的意義)が定まっていない場合、もしくはPMDAに対して何を聞きたいのか、どういう回答が得られれば納得するのかが定まっていない場合は議論が進まないケースがあります。

また、状況や開発ステージによっても多少変更が発生しますが、4つの情報を深堀・整理をして相談に持ち込むことがおすすめです。その4つとは「開発背景」「提供する技術」「使用する対象・使用する場面(現時点の想定で構いません)」「臨床的位置づけ(現時点の想定で構いません)」になります。
この中で最も重要なことは、「現状がどこまでできているのか」について説明することです。多少背伸びをした説明となっても構いませんので、現状できていることのデータを示したうえで、これからしたいことの全体像が伝えられるとPMDAとしても理解しやすくなるでしょう。


一度も相談に行ったことがない方にとっては、PMDAとの相談の流れについて想像しにくいかもしれません。最もオーソドックスな相談フローについて説明します。

【PMDAとの初回の対面助言に27万円を使っても良い状況の場合】は、全般相談×n→対面助言・準備面談(省略可)→開発前相談→【開発】→フォローアップ面談→全般相談×n→対面助言・準備面談(省略可)→プロトコル相談→【再検討】→フォローアップ面談→【試験実施】→全般相談×n→対面助言・準備面談(省略可)→評価相談→承認申請となります。
【PMDAとの初回の対面助言に27万円を使えない状況の場合】は、RS戦略相談(事前面談)×n→RS戦略相談(事前面談)×n→【開発】→全般相談×n→対面助言・準備面談(省略可)→プロトコル相談→【再検討】→フォローアップ面談→【試験実施】→全般相談×n→対面助言・準備面談(省略可)→評価相談→承認申請となります。
最初の全般相談については、ほとんどの場合が1回で終わることはなく、2回3回繰り返し行うことが一般的です。また、この全般相談自体は無料となっていて、対面助言・準備面談(省略可)、開発前相談では費用が発生します。

続いてのテーマ「相談事項の決め方」については、PMDAのホームページに相談区分一覧表が掲載されているのでそちらを参考にするとわかりやすいでしょう。開発相談やプロトコル相談で何を相談できるのかということが書かれていますが、冨岡さんが考える医療機器開発相談で相談できる内容は「評価方針の適切性(評価パッケージの充足性)」「治験の要否」「開発方針の妥当性」です。
実際に相談する際の留意点として、曖昧な相談には不明瞭な助言しかできないため、相談者の確固たる考え方を示すことが重要です。また、相談者が気にしている点は「相談事項」として相談し、PMDAと議論する中で考えを深めましょう。その上で、PMDAが気にしていることや今後検討してほしい点については、気づいた範囲でPMDAから指摘されることもあります。

最後のテーマ「相談資料の構成」では、医療機器開発前相談で使用する相談資料に盛り込むべき内容、および検討期間・費用についてです。
盛り込むべき内容として、「開発背景・提供する技術・使用する対象や場面・臨床的位置づけ・相談事項」を明記しましょう。相談資料の提出時期は相談実施日の約2週間前、相談にかかる費用は264,000円です。

講演の最後には、参加者から「RS戦略相談を受けた際、トータルの期間でいうと時間がかなりかかる印象でしたが、開発前相談でも同じようにかかるのでしょうか?」などの質疑応答が交わされました。さらにその他の参加者からは、自身が直近で行ったRS相談についての情報がシェアされ、資料の精度を高めることの重要性や、PMDAに相談することの価値を再確認して講演を終えました。

冨岡さん、本当にありがとうございました。