講師

野川 淳彦 氏

2024年2月のメドテックサロンでは、講師として野川 淳彦さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは「企業の開発」です。
今回のテーマにおける大きなポイントは、「商品ライフサイクル」と「成長の歴史」の二点です。講演の中では、この二点について重点的にお話いただきました。

まず一つ目の「商品のライフサイクル」については、開発のステージについて解説いただきました。
商品のフェーズは、探索から始まり、開発1、開発2、治験/申請、生産移管、販売、改善、改良の順にステージが変化します。開発1と開発2に分かれていますが、開発2に関しては正式な開発に当てはまるため、設計管理つまりデザインコントロールのフェーズに入ります。

商品を販売して問題が起きたときには、「なぜ問題が起きたのか」「どうすれば改善されるのか」といった対応をしなければなりませんが、そのためには、この商品がどういった意図で設計され、どのような方法で設計され、どのように検証されたのかがわからないと対応ができません。最終目標である販売、改善、改良に辿り着くためには、きちんとした開発段階が必要になるのです。

開発2で最初に行うことは「デザインインプット」です。検証可能な性能の指標を開発2の段階でインプットして決めなければいけません。ここで重要なことは「どういう実験をしたら、どういう結果が出るのか」ということです。

なぜそれが必要なのかというと、開発が終わった後には設計仕様書や図面などのアウトプットが出ますが、最終的にできたサンプルに対して、定義されている評価法を使ってインプットで設定された事項の数値目標を全て出さなければならないからです。

その後、治験を行うケースもありますが、その場合は工数が倍ほどかかることになります。治験の途中で何か問題が起きたときには、治験をそこでストップし、原因を究明して対策をとるため、そのためのチームも加わります。治験が終わると生産までは一本道になるため、企業は途中でやめることができません。そのため、治験の壁はとても厚くなっています。

そして、治験と申請が無事に終わると、今度は工場技術や生産管理が入り、生産移管が終わるとそこで実際に販売が始まります。当然、販売にはマーケティングや戦略が必要になるので、そのための人材が必要になり、商品が売れた場合、工場は生産を増やさなければなりません。市場でクレームが起きることもあるので、その対応も必要です。つまり、商品のライフサイクルでは開発後の生産、販売、改良、継続というのはすごく大変だということです。

次に、野川さんの会社がどのように成長してきたのかについてお話しいただきました。

医療という事業領域の中で始めたのが心臓血管カテーテルで、ガイドワイヤーやPTCA、IVUSなどを自社で始めました。
心臓血管カテーテルという事業分野のセグメントの中でガイドワイヤーやPTCAを作りましたが、ステントという商品はかなり新規になるため外部を入れて作りました。また、IVUSよりも血管をさらに細かく見るOFDIという商品も作り技術導入しました。

一方で、上図の黒い枠になかったものとして脳コイルがありますが、これについては会社を買収しました。なぜかと言うと、技術だけを買っても自分たちで生産・販売できないからです。他にも、クロージャ―というのは、他社のある部門の商品を導入しています。これに関してはかなり特殊ではありますが、心臓血管カテーテルという販売網があるので何とかなりました。

つまり、技術導入にさかのぼってできるのは、おそらく自前の分野、もしくは注力分野に限られます。それがない場合は会社を買わないと難しいということです。

とはいえ、会社というのは時代と共に変化していきます。そもそも今の事業というのは、何もないところから勝てる理由もなく無謀な挑戦で生まれていますが、今の日本企業は成功する理由が見えないと挑戦しづらいというところに野川さんは危機感を持たれているとのことでした。

講演の後半には、参加者の方から「外資の場合の注意点やアドバイス」についての質問がありました。

野川さん、ありがとうございました。