講師
株式会社荒木製作所
営業部営業課 係長
小野 恭幸
講義の内容
2021年5月のメドテックサロンでは、講師として株式会社荒木製作所の営業部営業課、小野恭幸様をお招きして、オンラインにて講演を開催致しました。
冒頭では、荒木製作所の代表三原様より、ご挨拶をいただきました。講義は、「医療機器開発における筐体デザインと設計~製品の早期創出を実現する「圧空成形」の活用方法~」というタイトルで、「会社紹介」「圧空成形を利用した医療機器の紹介」「少量生産に最適な圧空成形の特徴」「デザイン導入と設計支援」という流れでお話しいただきました。
まずは、荒木製作所の会社紹介をしていただきました。荒木製作所は大阪府枚方市に本社を構えており、プラスチック圧空・真空成形加工及び、プラスチック精密切削加工品の製造販売を行っていらっしゃいます。お客様の8割以上が医療機器メーカーで、成分分析機器のメーカーさんもいらっしゃるそうです。
圧空成形を利用した医療機器に関して、どのような製品に使用されているのかをご紹介いただきました。実際の医療機器のどの部分に圧空成形が使用されているかという写真に加え、年間どの程度の製作台数があるかについてもあわせて教えていただき、大変興味深く聞かせていただきました。圧空成形は、量産しやすさという面で、多く取り入れられるようになったそうです。新型コロナウイルス感染症治療で注目を集めたECMOにも圧空成形は利用されており、通常の生産台数は年間40~100台のところ2020年は300台生産されたと説明してくださいました。
医療機器は、家電や自動車などの一般消費者向け製品と比較すると、圧倒的に製作数が少ないからこそ、製品の早期創出には小数量に適応する製作方法を認識しておく必要があるということを、強調しておっしゃっていました。製作方法が異なると、デザインや設計の方法も異なってくるということです。
次に、圧空成形がなぜ少量生産に適しているかについて詳しく解説してくださいました。プラスチック成形とはどのようなものか、圧空成形との異なるポイントをまとめてご説明いただき、とても勉強になりました。
また、圧空成形のシミュレーションと、その次の行程であるNC加工について、CG動画を見せていただきました。圧空成形品が完成するまでの詳しい流れを動画で見ることができ、圧空成形について視覚的に理解することができました。次に、製作されている実際の製品と数量について、ご紹介いただきました。圧空成形は、少量生産に向いた生産方式であるため、医療機器に多く取り入れられているということでした。
後半では、デザイン導入と設計支援についてお話しいただきました。デザインについては、荒木製作所に依頼してから、デザイン・設計会社にデザインを依頼するという流れで進める方がスムーズだそうです。専門機器を製作する場合と一般的なデザイン製作の流れの違いをその理由を踏まえてご説明いただき、貴重な学びになりました。Reデザインを含めた設計支援だけの対応もされているとのことでした。実際に生産された製品も写真付きでご紹介いただきました。デザイン・設計に関して何かお困りごとがあれば、ぜひご相談くださいとおっしゃってくださいました。
「終わりに」として、医療機器開発の製品実現に向けては、少量品の製造方法を理解する必要があるということ、また製品実現を可能にするデザイン導入と設計支援に関しては設計の「核」となる製造業とのつながりを持っておくことが製品実現への近道であるということを、改めてまとめていただきました。また補足として、開発した医療機器が量産につながらない失敗事例の要因について語ってくださり、現場の苦労をうかがい知ることができました。
最後に設けていただいた質問コーナーでは、「圧空成形に使われる樹脂材料の要件や具体的にどのような樹脂材料が使われているのか」「一般のプラスチック成形加工品との材料の違い」「圧空成形の金型が一般的な金型に比べて安い理由は」「3Dプリンターと圧縮成形の違いと、どのように選択すべきか」などの多くの質問があり、荒木製作所の皆様より、丁寧に分かりやすく回答してくださいました。
小野様、荒木製作所の皆様、ご講演ありがとうございました。