講師
松井 克文
東京大学 本郷テックガレージ ディレクター
ワークショップの目的
人々のニーズに即した医療機器をつくるためのプロトタイピング方法を習得する。情報技術を用いたプロトタイピングを通して、チームメンバーとビジョンやユーザ体験を素早く共有できるようになる。
ワークショップの内容
本ワークショップでは、アイデア発想・試作・テストのサイクルを高速で回す「ラピッドプロトタイピング」を学びました。参加者は5つのチームに分かれ、課題や解決策のアイデア出しから、市販のマイコンボードやセンサ、ウェブベースのツールなどを組み合わせたプロトタイプ制作、デモンストレーションまでを実践的に経験します。
冒頭、講師からデザインシンキングやプロトタイプなどについて概要の説明がありました。次に、チームを知るためのアイスブレイクが行われ、メンバーが共通して「好きなこと」を見つけます。その「好きなこと」に対する医療の課題を挙げ、本ワークショップで各チームが取り組む課題と解決策が決められていきました。その後、ユーザー体験やストーリーを視覚的に示すため、イラストや説明文を交えたストーリーボードを作成。各チームが課題・解決策・想定するユーザーを発表しました。
こうしたアイディエーションには、デザインスプリントを本ワークショップ向けに改変したメソッドが用いられ、短時間で多くのアイデアを出す「クレイジー8」、アイデアの質だけを純粋に評価する「サイレント評価」といった手法が活用されました。
続いてプロトタイプに実装する機能を決めます。ここでは、初期のユーザーに対して「何らかの価値をもたらすかどうか」を見極めるための最初のプロダクト「Minimum Viable Product(実用最小限の製品)」を念頭に、実装したい機能のアイデアの中から比較的小規模な3つの機能が選ばれました。
プロトタイプ製作は、段ボールやガムテープなどの工作材料ほか、教育向けマイコンボード「micro:bit」、センサーやスピーカーなどのモジュールがセットになった「Grove Kit」、入門用プログラミング言語「Scratch」などを使って進められます。各チームの形が見えてきたところで進捗の中間発表が行われ、ワークショップは仕上げのプロトタイピングへ。各機能を統合させて体験として実感できるプロトタイプになるように作業が進められました。
完成後、各チームからは「医療におけるAIを活用した個人の識別化」「IoTを活用した便座での体調管理や疾患予想」といったプロトタイプのデモンストレーションがあり、参加者と意見が交わされました。最後に、経験学習サイクルに基づいて経験の振り返りが行われ、「Keep(このまま続けた⽅が良いこと)」「Problem(今回⾒つかったプロジェクト上の課題)」「Try(次に試した⽅が良いこと)」をアウトプット。
各チームから「社会課題に取り組めたが、機能を統合するのに時間がかかった。これがベストな解決策だったか検証したい」「心理的安全性を確保したディスカッションができた。ユーザー設定に甘い部分があったので次はしっかりリサーチをして取り組みたい」といった意見が出され、学びが共有されました。