講師

柿花隆昭氏

(東京大学医学部附属病院バイオデザイン部門 特任助教)

桐山皓行氏

(東京大学医学部附属病院バイオデザイン部門 特任助教
スタンフォード大学バイオデザイン グローバルファカルティ)

本セッションでは、医療機器開発において観察結果から問題点の抽出を行い、ニーズステートメントを整理。ニーズ調査やニーズクライテリア作成までを実践しました。セッションは、2つのグループに分かれて、講義パートとグループワークパートを交えて進められました。

(1)バイオデザインプロセスの基礎を学ぶ

バイオデザインプロセスとは、医療機器におけるデザイン思考のこと。医療現場のニーズを基にした真の課題解決を行い、ニーズ探索の段階から事業性を検証することが必要だと説明がありました。また、持続可能なビジネスモデルを実現するため、多様なメンバーで固定概念を打破することも大切にしています。医学の複雑さやエビデンスの有無、患者のセグメンテーションや多様なステークホルダーなどからニーズ理解が難しく、ビジネスモデルは通常の商品開発よりも戦略的に構築する必要があると語られました。

(2)観察と課題の特定を行い、ニーズステートメントを作成

デザインワークショップ前半では、参加者自身が観察結果と課題からニーズを抽出し文章に落とし込むという「ニーズステートメント」の作成を行いました。グループごとに違う症例が提示され、ファシリテーターも適宜フォローアップしながら観察結果から課題の抽出が進められます。

課題を見つけるには、患者や医師の行動を追っていくペイシェントフローを作成するとスムーズです。ペイシェントフローの作成は、まずスタートとゴールを決め事実のみを列挙、続いて患者および医師・医療者の行動を追加し、最後にそもそもなぜその事象が起きたのか疑問を書き出します。

グループ1は、糖尿病と高血圧の既往がある心原性脳梗塞のケースをもとに、ペイシェントフローからニーズステートメントの作成が実践されました。

グループ2は、骨粗鬆症とアルツハイマー型認知症の既往と転倒歴のある方が大腿骨頸部骨折を受傷し人工骨頭置換術を施行したケースをもとに、ペイシェントフローからニーズステートメントの作成が実践されました。

(3)ブラッシュアップとニーズの絞り込み・ニーズクライテリア

デザインワークショップ後半では、前半で挙げられたニーズステイトメントのブラッシュアップが行われました。ターゲットをより明確にすること、ソリューションを含まないこと、価値を定量化すること、因果関係が明確なことなどのポイントを整理しながらニーズの絞り込みを行います。

ニーズの絞り込みの際は、疾病の基礎や既存治療法、ステークホルダーや市場分析の項目をもとに調査していきます。ニーズとソリューションの架け橋となるものをニーズクライテリアといいます。ニーズステートメントと有効性、コスト、安全性、ユーザビリティの4つの調査項目を元に、ソリューションが満たさなければならない重要な要求事項や、あった方が良い要求事項を決定していきました。

最後に、今後必要となる客観的評価資料の作成について説明があり、本セッションが締めくくられました。