講師

株式会社レーマン 永田 徳子 氏

2024年10月のメドテックサロンでは、講師として株式会社レーマンの永田徳子さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。

講義テーマは、「伝える、納得させる資料作成のためのビジュアルデザイン」です。
講義は、「情報を伝えるための概要図」、「ビジュアルデザインのちょっとしたコツ」、「プロへの依頼」という流れでお話いただきました。

尚、今回のお話では、この分野のプロである、もともとレーマンにも勤務されていた有賀雅奈さん(桜美林大学リベラルアーツ学群准教授)、同じくレーマンのサイエンスデザイナー高柳航さんから、常日頃から多大なご指導をいただいていております。

まずは「情報を伝えるための概要図」についてお話いただきました。情報を伝えるための概要図にはいくつかのポイントがあります。

  1. 情報量は必要最低限
  2. グラフィックを効果的に組み合わせる
  3. 異なる情報を区画で分ける
  4. 画像、グラフ、テキストで成り立つ
  5. 陰影のないフラットな表現
  6. アイコンやピクトグラム的表現
  7. カラフルに美しくデザイン

これらのポイントを基に「誰に向けて」「何のために」「どこで使うのか」を踏まえて、文字の種類や装飾の多さなども考慮する必要があります。
専門家同士の論文のなかで見せるグラフィカル・アブストラクトは、インフォグラフィックの仲間という位置づけになっており、論文の研究内容を素早く把握することが目的です。
これはアブストラクトの文章を1枚の図に要約したもので、グラフィックデザインの影響をかなり受けたものになります。グラフィカル・アブストラクトの特徴は以下の通りです。

  1. 研究内容の把握が優先
  2. 内容が素早く伝わる、理解できる
  3. ジャーナルの読者がターゲット
  4. データの図は少ない(本文に記載)
  5. 結果や成果を魅力的に伝える
  6. アブストラクトにない情報は入れない

グラフィカル・アブストラクトは、とにかく見てもらうことに重点を置いたものになっており、論文への誘導をゴールと考えています。

次に、「ビジュアルデザインのちょっとしたコツ」についてお話していただきました。ご紹介いただいたコツは以下の通りです。

<色でメリハリをつける>

  • よほどのプロではない限り3色程度に抑える
  • グレースケールにしたときのことを考える
  • メインカラー(全体のイメージ)とアクセントカラー(特に注目させる)を決める
  • メントアクセントは色相環の反対側を使うことが多い
  • 色がたくさん必要なときは同系色を使う
  • 原色を使うとチープなイメージになりやすい

<視線を誘導する>

  • 矢印を使うことで目線の流れを誘導する
  • 「Z」の形に目線が移動することを意識して配置する

<イラストの強みを活かした使い分け>

  • 細密画:実在物を観察して科学的要素を盛り込む(キービジュアル/標本など)
  • 線画:目的を持って標準化された模式図(教育教材など)
  • ピクトグラム・アイコン:利便性や視認性を高め、視線の誘導を強調するシンボル

最後に、「プロへの依頼」についてお話していただきました。プロへ依頼する際には、早めの想定が重要です。具体的には以下の5つのSTEPで進めていきます。

(STEP1)
探す:内容の正確な理解が必要となるため専門性の高い企業がおすすめです。プロによっても各々得意分野が違うため確認するとよいでしょう。
(STEP2)
問い合わせ:メールで目的・内容・予算・納期を伝え、ラフ案があれば添付します(NDAの締結があると安心です)。
(STEP3)
契約書締結:費用・納期・利用許諾範囲・修正対応などについて記載された契約書を締結します。
(STEP4)
制作:ヒアリングの後にラフ作成をします。仕上げまでは3~4回のメールのやり取りを行います。
(STEP5)
完成・納品:データ納品が行われます。支払いは私費でも公費でも対応できる場合がほとんどです。

多くのケースでは、予算の申請をする際にビジュアルが必要になることが想定されていません。すべてできたときに「ビジュアルが必要だ」となるため、ビジュアル制作の予算と時間がないケースがかなり多くなっています。よりよいビジュアルが欲しい場合は、早め早めのご相談がよいでしょう。なお、医療機器開発の研究では、グランツ申請に向けてのビジュアルはイメージが伝わりやすい3Dモデルを活用することがお勧めです。

講演の最後には、画像と文字の配置方法についてやイラスト作成の費用感などについて、「アプリでつくる方がいいのか、プロに依頼してつくる方がいいのか」といった依頼の判断基準に関しての疑問も寄せられました。

永田さん、ありがとうございました。