日本バイオデザイン協会理事
東京大学大学院医学系研究科心臓外科学教授
東京大学臨床生命医工学連携研究機構教授
東京大学医学部附属病院医工連携部部長
小野 稔
このたび、バイオデザイン手法に基づいて医療機器開発に意欲を持つ若手開発者の開発支援を行う日本医療研究開発機構(AMED)の事業「バイオデザインメソッドによるアントレプレナー型若手医療機器研究者の開発サポートプログラム」を東京大学医学系研究科で5年間にわたり実施することになりました。バイオデザインプログラムは米国Stanford大学のPaul Yock博士らが開発した医療機器開発に必要なプロセスを一気通貫にすべて体感する教育プログラムです。わが国においては、2015年に大阪大学、東京大学、東北大学の3大学がStanford大学と交流協定を締結して教育プログラムが開始されました。毎年fellowshipが実施され、これまで通算5期にわたります。東京大学のバイオデザインプログラムの卒業生からすでにStart-up企業が複数立ち上がり、順調に開発を進めています。
バイオデザインの教育プログラムは3段階に分けることができます。
- 医療現場の未解決ニーズの特定(Identify)
- 問題を解決する医療デバイスの開発(Invent)
- 事業化を通じたイノベーションの実現(Implement)
特徴的なことは、開発の初期段階から事業化の視点を強く意識してニーズを検証することにより、実現性の高い医療ビジネスを生み出すことにあります。ニーズ発であれ、シーズ発であれ、多くの医療機器開発は往々にしてデバイスの作り込みに専念するあまり、実用性あるいは事業化からかけ離れた方向に進みやすく、ある程度開発が進んでから軌道修正することは容易ではありません。
そこで本AMEDプログラムでは、ノウハウを持つ医療機器開発の泰斗を講師に招きつつ、バイオデザイン教育を受けた教員がいわば“伴走”する形で医療機器開発の意欲ある若手の指南役を果たします。バイオデザイン手法の中で欠かせない医療現場における未解決ニーズを出発点として、医療機器開発の事業化に欠かせない医学、工学、ビジネスすべての観点を融合しながら現場で本当に求められるデバイスを創出できる優秀な研究者を数多く輩出する契機を生み出したいと考えています。是非とも、日本から世界へ次世代変革につながる医療機器開発を牽引できるトップランナーを目指してほしいと思います。