講師
北川 亮 氏(元 株式会社スパインクロニクルジャパン)
2024年11月のメドテックサロンでは、講師として元株式会社スパインクロニクルジャパンの北川 亮さんをお招きして、オンラインにて講演を開催いたしました。
講義テーマは「アカデミアtoピッチ」です。
「01.PITCHを知る」、「02.PITCHを作ろう」「03.PITCHをする」の流れでお話いただき、研究のシードをいかにして、アカデミアから社会実現を目指したPITCH(ピッチ)のフォーマットに変えるのかについて詳しく解説いただきました。
まずは、ピッチについて解説いただきました。
ピッチとは、「投げる、つっつく」という意味を持つ動詞で、シリコンバレー発祥の言葉です。現在は、「短い自社プレゼンを相手に投げる」という意味でも用いられています。
研究から社会実装を目指すには、スタートアップやライセンスアウト、共同研究などさまざまな方法がありますが、いずれの場合もパートナーの存在は欠かせません。そのため、パートナーを得るために大切なポイントは、研究シードをいかに短時間で上手に伝えるかということです。そこでピッチという技術が必要になってきます。
学会とピッチでは聴いているオーディエンスがまったく違うため、押さえるべきポイントも違ってきます。それぞれの押さえるべきポイントについては、下記の通りです。
- 学会:背景、目的、方法、結果、考察、結語
- ピッチ:問題点、解決法、ビジネスモデル、市場規模、タイムライン、アスク
ピッチでは聴いている方が学会とは違い技術の専門家ではないため、内容は噛み砕いてシンプルにする方がより好まれます。時間は基本的には5分を目安にし、スライドは10~15枚がスタンダードです。ピッチでは、内容をすべて入れることが目標ではなく、シンプルに伝えて次につなげることが大きな目標となります。
学会発表に作法があるようにピッチにも作法が存在しますが、アーリーなスタートアップの場合は、Y Combinatorというフォーマットに沿うのがベターです。具体的な流れは以下の通りです。
- Title:
ロゴや社名、短いキャッチフレーズを入れるが学会のような長いタイトルは不要 - Pain:
解決したい現状の問題点、なぜ/どのくらい困っているのかを入れる。その際、できれば1つに絞り、関係のない背景は入れない。 - Solution :
Pinを解決するProduct Unmet Needs(我慢して少なくする・技術の詳細よりも具体的な利益を) - Traction and Revenue:
(もしあれば)売上、論文、IP、Proof of Concept - Competitive Advantage:
競合優位性(入らなかったAssetはここに入れてもよい、表で比較して良い部分にチェックするだけの方がわかりやすい) - Business Model:
何をどう売るのか、BtoBなのかBtoCなのか、規制はPMDAなのかFDA classなのか、保険償還がついているのか - Market Size:
TAM(トータル)SAM(自分)SOM(獲得できるもの)、金額、数、CAGR - Team:
メンバー紹介。写真は大きく、強調したいことだけを入れる(Advisorは入れなくて良い) - Timeline:
起業から現在までの流れを簡潔に紹介。金額(わかれば)、Establish、PoC、Prototyping、clinical、trial、regulatory - Ask(+Appendix):
Audienceに期待すること。投資、人の紹介、ライセンスアウト、共同研究、Incubatorなど(連絡先やLinkedln、QRコードも入れる)
ピッチはStory Tellingとも言われているため、話が迷子にならないように1番のPain(問題点)を軸に組み立てていくことが重要です。そのうえで、Painにキャッチーな個人的なエピソードがあればなお良いでしょう。
なお、ピッチをつくるうえで北川さんが大切にされているマインドは「Zen Mind」です。ピッチは詰め込みすぎずにシンプルにつくった方が相手に伝わりやすいため、フォントや配置、配色、アイコンにも気をつけながら作成するべきです。
講演の最後には、「ピッチのなかでの動画の位置付けについて」、「スライドがビジーになりすぎることと、シンプルナイズするためのバランスのとり方やコツ」、「演出するための工夫について」などの質問などが寄せられました。
北川さん、ありがとうございました。